人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「イブン・バトゥータと旅する世界史」の実践と世界史教育⑥

 次に資料③の次の文章を読ませる。
「メッカは大厦高楼のならび立つた大きな都市であるが、周囲を山に囲まれた山の底にあたるから、いよいよその地まできて、初めて町の姿を目にし得るのである。近くの山々はさして高峻というわけではない。東方にはアブー・クバイス山があり、西方にはクワイキアーン山がある。北方にはジャバルル・アフマル(赤山)があり、アブー・クバイスの近くには大小の峠路がある。ミナー・アラファート、アル・ムダリファなどのようなハッジ(聖地巡礼)の儀式の行なわれているところは、みなその東方の山地にある。メッカはコーランに不毛の谷間とあるごとくであるが、この地にアブラハムが神の恩寵を祈ってからは、すべての新鮮で良いものがこの地に送られ、あらゆる種類の果実が運びこまれるようになった。わたくしも、この地で葡萄、無花果、桃、なつめやしなどを食べたが、その味の良さは、世界のいずこにも比類のないものであった。メロンなどもそうで、その芳香といい、甘さといい、他に比ぶべきものはない。肉類などもメッカのは脂がよくのっていて舌もとろけるかと思うばかりであった。要するに、もろもろの土地の良い品が、この町に集まってくるのである。
 アル・マスジドル・ハラーム(神聖なモスク)は町のほぼ中央にあって、東西は約400ディラー(200m)、南北もほぼおなじくらいである。その中央にカーバが立っている。方形の建物で、その美しさは筆にも言葉にも尽くし得ぬのである。褐色で堅牢な石材を巧みに積み上げて作ったもので、多くの年月を経ても少しも変わったところが見えぬ。カーバの入り口は、北東面の壁(地上から2mほどの高さの所)にあり、この入り口と黒石との間の壁をアル・ムルタザム(身をすり寄せるところの義)という。巡礼の人々は、ここに胸をあてて熱烈な祈りをささげるのである。
 以上の文章を読ませることによって、メッカの様子やカーバ神殿のもつ意味をおさえる。そして、バトゥータがなぜメッカをめざしたのかを問い、「イスラーム教の成立」から「ウマイヤ朝」までの歴史を学習する。
「イブン・バトゥータと旅する世界史」の実践と世界史教育⑥_a0226578_18475213.jpg
聖地メッカのカーバ神殿(東京書籍「新選世界史B」より)
by YAMATAKE1949 | 2012-02-04 08:48 | 授業実践