人気ブログランキング | 話題のタグを見る

第32回世界史講座のまとめ④(社会主義)

第32回世界史講座のまとめ④(社会主義)_a0226578_9453393.jpg
(東京法令「世界史のミュージアム」より)
3 社会主義と二月革命
1)社会主義
 ヨーロッパ各国で工業化が進展すると、労働問題が深刻になった。労働組合が組織され、労働者によるストライキなどの労働運動が登場し、イギリスでは児童労働の禁止や労働時間短縮などを定めた工場法が成立した。しかし、多くの経営者はこうした法律を無視し、多くの国では労働者の状態は改善しなかった。こうしたなかで、資本主義社会の根本的な改革を主張する社会主義思想が普及した。
イギリスのロバート・オーウェン、フランスのサン・シモンとフーリエは、友愛や助け合いを基礎にする理想社会を考えたが、計画の実現は不可能であった。
第32回世界史講座のまとめ④(社会主義)_a0226578_9583992.jpg
(東京法令「世界史のミュージアム」より)
 ドイツ生まれのマルクスとエンゲルスは上記のような思想を「空想的社会主義」と呼んだ。つまり、すばらしい理想を唱えれば全ての人たちはそれに賛同してくれると考えたからである。これに対し、マルクスは、ヘーゲルとフランスの哲学を取り入れ弁証法的唯物論を確立し、これを人類社会に適応した史的唯物論を主張した。それは、生産力の発展によって生産関係つまり社会が変化していくという考え方である。たとえば、人類の最初の段階である狩猟・採集経済や原始農耕という生産力の低い段階では、階級のない原始共産主義(原始共同体)社会である。しかし生産力が発展して余剰生産物が生まれると階級社会が発生する。階級社会も生産力の発展によって、奴隷制社会から封建(農奴)制社会、そして資本主義社会へと進んだ。(資本主義という呼び方はマルクスに由来する。)市民革命によって、「自由・平等」は実現されたかに見えたが、豊かな資本家と貧しい労働者という階級社会はまだ残っている。そして、労働者の階級闘争によって資本主義社会が倒され、社会主義社会が実現し、再び人類は階級のない社会へと移行する。弁証法でいう「否定の否定」の論理である。もう一つマルクスが主張したのが「剰余価値」説であり、これによって資本主義社会における搾取の存在を明らかにした。商品の価値は何によって決まるか、それはその商品についやされた労働力の量によって決まる。商品を売買しても価値は増えない。資本家が機械・原料・労働力などを購入するが、機械や原料は価値を移転するだけであって増やさない。唯一価値を増やすのは労働者である。労働者の賃金は彼が創り出した価値どおり支払われていないのである。たとえば、月20万円の賃金を稼いでいる労働者は、実は月100万円の価値を創り出しており、月80万円が剰余価値でありこれが資本家のものとなる。
 「史的唯物論」と「剰余価値」これによってマルクス・エンゲルスは科学的社会主義を確立し、1848年に「共産党宣言」を発表して、労働運動と社会主義思想を結びつけて、万国の労働者が団結して戦うよう呼びかけた。彼はやがて資本主義のしくみを分析して「資本論」を書き、ヨーロッパ社会主義運動を代表する指導者になった。
by YAMATAKE1949 | 2013-02-03 11:14 | 世界史講座