第55回世界史講座のまとめ①(アメリカ外交の転換)
2 アメリカ外交の転換
1) 冷戦体制のゆるみ
ヴェトナム戦争は、アメリカ経済に深刻な影響を与えた。そして、国際的威信を低下させたアメリカは、ソ連との緊張緩和をはかり、戦略ミサイルの数を制限する軍縮交渉である戦略兵器制限交渉(SALT)をすすめた。一方で、ソ連と対立する中国に接近し、1972年ニクソン大統領の訪中を実現させた。
2) 米中国交正常化
この間、中国は1971年には台湾の中華民国政府にかわって国連代表権を認められた。また、1972年には田中角栄首相が訪中し、日中国交正常化が実現され、1979年には米中国交正常化がおこなわれた。
3 多様化する地域紛争
1) 中越戦争
カンボジアでは、1976年にポルポト政権が成立し、中国と密接な関係をもちながら、農業を基盤とした極端な自給自足経済による国家建設を急激にすすめ、その過程で多数の国民が虐殺された。1979年、対立を深めていたベトナムがカンボジアに侵攻し、反ポル・ポト政権を成立させた。しかし中国はヴェトナムの影響力が周辺諸国に広がるのを恐れ、ヴェトナムに侵攻し、中越戦争となった。
2) バングラデシュの独立
パキスタンは、インドをはさんで東西に分かれていたが、東パキスタンが1971年にインドの支援でバングラディシュとして独立した。
3) スリランカの民族問題
1972年にセイロンから国名を変更したスリランカでは、多数派の仏教徒のシンハラ人に対して、少数派ヒンドゥー教徒のタミル人が自治要求運動をおこし、分離独立をめぐって、両者の対立が激化した。
スリランカの歴史と民族対立については、青木書店 歴史教育者協議会編集 「知っておきたいインド・南アジア」という本に私が書いていますのでぜひ読んで下さい。