ポーランド旅行記⑰(ヴィエリチカ①)
私たちは午前7時30分にクラクフのホテルをバスで出発し、世界遺産ヴィエリチカ岩塩坑へと向かった。距離にして15㎞、所要時間は30分の予定である。
バスは午前8時前にヴィエリチカ岩塩坑に到着したが、シーズンオフにもかかわらず入口は大勢の見学者で混んでいた。そこにポーランド人であろう若いカップルがいたので許可を得て写真を撮らせてもらった。
私たちのガイドを担当してくれたのはマチエイという名の32歳の青年であったが、年齢よりも少し老けて見えた。
彼はこの地方のシレジア出身で、ガイド歴は4年目だということだが日本語がとても上手だった。さて、岩塩坑の見学は、下りは歩いて降りることになっているが、足の悪い人や高齢者、希望者はエレベーターを使うこともできる。私たちのほとんどの参加者は歩いて降りることになった。長い木の階段を何段も何段も下って、やっと木でできている坑道を歩いた。
なぜヴィエリチカに岩塩があるのかというと、この地方は約2000万年前は海であったが、カルパチア山脈が隆起して陸地となり、海の水分が乾燥して岩塩となった。付近の地下水から塩水がしみ出すことは紀元前から知られており、当時から塩水を干して塩が作られていた。岩塩の採掘がはじまったのは10世紀頃からといわれている。ポーランドの伝説では、ヴィエリチカの歴史は13世紀から始まる。その昔、ハンガリーの王女キンガ姫がポーランド王家に嫁いだ時、強い想いをこめて投げた指輪の示した場所がヴィエリチカであり、そこから塩があふれるようになったという。その後採掘は700年以上続き、1950年代まで掘り進められた。その結果、坑道の総延長は約300 km、採掘後にできた空洞の数は2,000以上、また最深部は327 mに達する広大な地下採鉱場が出来上がった。一般に公開されているのは深さ135mまでの僅かな部分であり、20以上の部屋や礼拝堂を巡る約3.5 kmが見学ルートとなっている。