イタリア旅行記20 (ピサ②)
この洗礼堂は12世紀の半ばから、14世紀にかけて建設されたものである。中には大きな洗礼槽(せんれいそう)が置かれているが、これは身体を水につける浸礼のためのものである。
この洗礼槽は13世紀半ばのGダ・コーモの作品である。この空間の音響効果が素晴らしく、時間を決めて堂内の番人が歌ったり、手を打ってみせたりしてくれる。ガイドさんの話ではそれが10時に始まるという。私たちが待っていると、番人と思われる人が出てきて歌をうたってくれた。
歌といってもほんの少し声を出しただけであったが、その音響のすばらしさは今まで一度も聞いたことがないような素晴らしいものであった。この写真の左側に見えている説教壇は、ニコラ・ピサーノが1260年に作成したのもので、イタリアにおける最初のゴシック彫刻のひとつである。
ガリレオもこの洗礼堂で洗礼を受けているとガイドのラウラさんが説明してくれたが、彼女はピサの出身で、彼女ももここで洗礼を受けたとのことである。ガイドさんによると、この洗礼堂は世界一大きくて高さは51mもある。私たち夫婦は、階段に上って上から洗礼堂の内部を撮影した。
洗礼堂から隣のドゥオーモ(大聖堂)がきれいに見えた。
洗礼堂を見学した後、私たち夫婦は隣のドゥオーモ(大聖堂)の内部に入った。この建物は、ピサ・ロマネスク様式の最高傑作である。ブスケートの指揮のもとで、1068年から50年の歳月をかけ、「古代の壮麗なバジリカの再現」をめざして建てられたといわれる。しかし、12世紀にはライナルドによって改修工事が行われた。すばらしいなファザードも、その時に彼によってデザインされたものである。
内部には説教壇が目についた。
この説教壇は、ジョヴァンニ・ピサーノの手によるものでイタリアン・ゴシックの作品のなかでも最重要なもののひとつである。この説教壇の横に大きなランプがあるが、これが「ガリレオのランプ」と呼ばれるものである。
このランプの揺れにヒントを得てガリレオは振り子の法則を発見したといわれている。しかし、実際にはランプがここに取り付けられたのは法則発見の半年後のことであった。
ガイドさんの説明では、ドゥオーモのブロンズの扉が素晴らしいといわれていたので、私たちはここを出て、扉を見に行った。
この扉はボナンノ・ピサーノのイタリア・ロマネスク彫刻の代表作『キリストの生涯』が描かれていた。
この後、私たち夫婦はもう一度ピサの斜塔を見に行き、再度写真撮影に挑戦した。
今回の写真の傾きがほぼ実態とあっていると思われる。ところでこの斜塔は、ドゥオーモの付属鐘楼として、この町に生まれた建築家で彫刻家のボナンノ・ピッサーノによって造られたものである。倒壊を防ぐ工事が2001年に完成し、再び239段の階段で屋上まで登ることができる。私たち夫婦も屋上に登りたかったが、時間がなく断念した。
私たちは再びシャトルバスから自分たちのバスに乗り換えて、フィレンツェに戻った。