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世界史演習33(キリスト教の歴史⑥)

( 問 なぜ福音書(ヨハネを除く)は、イエスの逮捕について、イエスの処刑について  
  ローマが果たした役割をしいて軽視し、ローマ人を免罪したのか。)
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(ピラトスの審問 ウィキペディアより)
(その理由)
① 福音書の成立年代は、大体1世紀の後半から2世紀の初めにかけてであった。この時期は、原始キリスト教団から、キリスト教が生まれ、それがローマ世界に広がっていこうとする時期であり、また、キリスト教の主体性の確立とともに、ユダヤ教徒との闘争が激化した時期でもあった。したがって、キリスト教徒にとって、ユダヤ人は敵であり、キリスト教の伝道にたいする反対者としてうつっていた。だからこそ、キリスト教徒、また、その感情を代表した福音書記者は、イエスの最期を叙述するにあたって、ユダヤ人に最大の責任を負わせるような構成をとったのである。
② キリスト教徒がローマ帝国内にキリスト教を伝道するにあたって、キリスト教がローマ帝国にとって破壊的でないことを印象づける努力の結果として生まれているのである。イエス処刑の責任をユダヤ人に押し付けることは、逆に実際の抑圧者たるローマ人の責任を免罪することになる。この目的のために、福音書記者はピラトスを美化し、免罪することによって、帝国権力に迎合する形で権力の抑圧から、キリスト教を守り、帝国権力の監視の目をごまかして、キリスト教をひろめようとしたのであった。(参考文献 土井正興著「イエス・キリスト 三一書房)
by YAMATAKE1949 | 2013-12-06 09:32 | 授業実践